2ヶ月ほど前のことです。お風呂で体を洗っている時、ふと、右の首筋、耳の下あたりに、ビー玉くらいの大きさの、コリコリとしたしこりがあることに気づきました。痛みは全くありません。触ると、皮膚の下で少し動くような感じがします。「なんだろう、これ」。その日から、私の心は、重たい不安に支配されることになりました。すぐにスマートフォンで「首、しこり、痛みなし」と検索しました。画面に現れたのは、「リンパ節の腫れ」「粉瘤」「脂肪腫」といった、比較的安心できる言葉と共に、「悪性リンパ腫」「がんの転移」といった、恐ろしい言葉の数々でした。調べれば調べるほど、悪い可能性ばかりが頭をよぎり、夜も眠れない日が続きました。仕事中も、無意識に首のしこりを触っては、大きくなっていないか、硬くなっていないかと、一日中、そのことばかり考えていました。病院へ行かなければ、とは思うものの、「もし、がんだと宣告されたらどうしよう」という恐怖が、私の足を竦ませていました。しかし、このまま不安を抱え続けるのも限界でした。意を決して、私は近所の耳鼻咽喉科のクリニックを予約しました。診察の日、私は震える声で、しこりに気づいた経緯と、自分の不安な気持ちを医師に話しました。医師は、私の話を静かに聞いた後、丁寧に首を触診し、「おそらく、何かの炎症に反応した、リンパ節の腫れでしょうね。心配ないことが多いですよ」と、穏やかな声で言いました。そして、念のため、超音波(エコー)検査をして、しこりの内部の状態を詳しく見てくれることになりました。検査室で、首に冷たいゼリーを塗られ、エコーの機械を当てられる間、私の心臓は張り裂けそうなくらい、ドキドキしていました。数分後、再び診察室へ。医師は、エコーの画像を見せながら、「リンパ節の形もきれいですし、悪いものを疑うような所見はありません。おそらく、気づかないうちに、どこかにあった軽い炎症に反応したものでしょう。しばらく様子を見て、小さくならなければ、また来てください」と説明してくれました。その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜け、涙が出そうになったのを覚えています。この経験を通じて、私は、不確かな情報で一人で悩み続けることの辛さと、専門家の診断を受けることの大切さを、身をもって学びました。不安な時こそ、勇気を出して一歩を踏み出すことが、心の平穏を取り戻すための、唯一の道なのだと思います。