朝、ベッドから降りて最初の一歩を踏み出した瞬間、かかとに「ズキン!」と激しい痛みが走る。歩いているうちに少し楽になるけれど、また長時間座った後などに動き始めると痛みがぶり返す。このような、歩くと痛いかかとの症状に悩まされている方は、決して少なくありません。この痛みの原因として、最も頻繁に見られるのが「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」です。足の裏には、かかとの骨から足の指の付け根に向かって、強靭な繊維状の膜(腱膜)が、まるで弓の弦のように張られています。これが「足底腱膜」であり、歩行やランニング時の衝撃を吸収する、重要なクッションの役割を担っています。この足底腱膜に、長年にわたる負担や、急な負荷がかかることで、小さな断裂や炎症が起きてしまうのが、足底腱膜炎です。では、このようなかかとの痛みで病院へ行こうと思った時、何科を受診すれば良いのでしょうか。その専門の診療科は、「整形外科」です。整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、腱、神経といった、体を動かすための器官(運動器)の病気を専門とするエキスパートです。整形外科では、まず問診で、いつから、どのような時に、かかとのどのあたりが痛むのかを詳しく聞き取ります。そして、医師が直接かかとを触って、痛みの場所(圧痛点)を確認します。足底腱膜炎の場合、かかとの少し内側前方に、特徴的な圧痛点が見られることがほとんどです。診断を補助するために、レントゲン検査が行われることもあります。これは、かかとの骨に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるトゲ状の骨ができていることがあるためです(骨棘自体が痛みの直接の原因ではありません)。また、他の病気(疲労骨折など)との鑑別にも役立ちます。かかとの痛みは、放置すると慢性化し、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。自己判断でマッサージをしたりせず、まずは運動器の専門家である整形外科を受診し、その痛みの本当の原因を突き止めてもらうことが、回復への最も確実な第一歩となるのです。
かかとが痛い!その原因とまず行くべき診療科