腕や背中、顔など、体の様々な場所の皮膚の下に、触るとコロコロと動く、ドーム状のしこりができた。痛みやかゆみはないけれど、なんとなく気になる。このようなしこりの正体として、最も頻繁に見られるのが、「粉瘤(ふんりゅう)」あるいは「脂肪腫(しぼうしゅ)」といった、良性の皮下腫瘍です。これらのしこりを専門的に診断・治療する診療科は、「皮膚科」または「形成外科」です。まず、「粉瘤」は、「アテローム」とも呼ばれ、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に、本来であれば垢(あか)としてはがれ落ちるはずの、古い角質や皮脂が溜まってしまったものです。しこりの中心部をよく見ると、黒い点(開口部)が見られることもあります。通常は痛みはありませんが、この袋の中に細菌が感染すると、急に赤く腫れ上がり、強い痛みを伴う「炎症性粉瘤」という状態になることがあります。この場合は、抗菌薬の内服や、切開して膿を出す処置が必要になります。一方、「脂肪腫」は、その名の通り、皮下にある脂肪組織が増殖してできた、柔らかい良性の腫瘍です。粉瘤のように袋状の構造はなく、脂肪細胞の塊です。皮膚のやや深いところにでき、触ると、弾力のある消しゴムのような感触がします。通常、炎症を起こすことはなく、ゆっくりと大きくなるのが特徴です。これらの粉瘤や脂肪腫は、どちらも良性の腫瘍であり、必ずしも治療が必要なわけではありません。しかし、徐々に大きくなってきて見た目が気になる場合や、衣類と擦れて邪魔になる場合、あるいは粉瘤が繰り返し炎症を起こすような場合には、手術による切除が検討されます。手術は、局所麻酔下で、腫瘍を袋ごと、あるいは塊ごと、きれいに取り除くというものです。皮膚科でも手術は可能ですが、傷跡をできるだけきれいに治したい、あるいは顔などの目立つ場所にできたしこりの場合は、美容的な側面も考慮して治療を行う「形成外科」に相談するのも良い選択です。皮膚の下のしこりに気づいたら、自己判断で無理に潰そうとせず、まずは専門医にその正体を正確に診断してもらうことが大切です。