女性が自分の体に「しこり」を見つけた時、最も不安を感じる場所の一つが「乳房」ではないでしょうか。乳房のしこりは、乳がんの最も代表的なサインの一つとして知られているため、その発見は大きな心配につながります。乳房にしこりや、これまでになかった硬さ、ひきつれなどを感じた場合に、ためらわずに受診すべき専門の診療科は、「乳腺外科」あるいは「乳腺科」です。乳腺外科は、乳房に関するあらゆる病気の診断と治療を専門とするエキスパートです。乳がんのことはもちろん、乳腺症や乳腺線維腺腫、乳腺のう胞といった、乳房にできる良性のしこりについても、豊富な知識と経験を持っています。実は、乳房にできるしこりの多くは、がではない良性のものです。しかし、その鑑別は、専門家でなければ困難であり、自己判断は絶対に禁物です。乳腺外科では、まず丁寧な問診と、医師が直接乳房を触ってしこりの状態を確認する「視触診」を行います。そして、診断を確定させるために、専門的な画像検査が行われます。その代表格が、「マンモグラフィ(乳房X線撮影)」と「乳房超音波(エコー)検査」です。マンモグラフィは、乳房を板で挟んで圧迫し、X線撮影をすることで、非常に小さなしこりや、がんのサインである微細な石灰化を見つけ出すのに優れています。一方、超音波検査は、乳房に超音波を当て、その反響を画像化するもので、しこりの内部の性状(液体が溜まったのう胞か、固形成分か)を詳しく調べることができます。特に、乳腺が発達している若い世代では、マンモグラフィよりも超音波検査の方が、しこりを発見しやすいことがあります。これらの検査の結果、さらに詳しい検査が必要と判断された場合には、しこりに細い針を刺して細胞を採取する「細胞診」や、組織の一部を採取する「組織診(生検)」が行われ、がん細胞の有無を最終的に確定させます。乳房のしこりに気づいたら、いたずらに不安を募らせるのではなく、速やかに乳腺の専門家である乳腺外科医に相談し、正しい診断を受けることが、何よりも大切です。
乳房のしこりは乳腺外科へ