りんご病が「伝染性」の病気であると聞くと、多くの人が「頬が真っ赤になっている子供は、感染力が強いのではないか」と考えるかもしれません。しかし、ここには、りんご病の感染における、非常に重要な、そして少し意外な事実が隠されています。実は、りんご病が最も他の人にうつりやすいのは、あの特徴的な「りんごのような赤い頬」が現れる、ずっと前の時期なのです。りんご病のウイルスに感染してから、症状が出始めるまでの潜伏期間は、おおよそ10〜20日と比較的長めです。そして、潜伏期間が終わると、まず発熱や鼻水、咳、筋肉痛といった、ごく軽い風邪のような症状が現れます。この、一見するとただの風邪にしか見えない「カタル期」と呼ばれる時期が、ウイルスが体内で最も活発に増殖し、体外へ大量に排出されるため、感染力が最も強いピークの時期となります。ところが、この段階では、まだりんご病の特徴である発疹は全く出ていないため、本人も周囲も、りんご病に感染しているとは夢にも思いません。そのため、子供は普段通りに学校や保育園へ通い、大人は職場へ出勤し、知らず知らずのうちにウイルスを広げてしまうことになるのです。そして、このカタル期から1週間ほど経った頃、ようやく頬に蝶が羽を広げたような、境界のはっきりした赤い発疹が現れます。この特徴的な発疹が出現する頃には、体の中では既にウイルスに対する抗体が作られ、ウイルスの活動はほとんど終息しています。つまり、頬が真っ赤で、一見すると最も感染力が強そうに見えるこの時期には、もはや他の人にうつす力は、ほぼなくなっているのです。この「発疹が出た時には、もう感染力はない」という点が、りんご病の感染対策を難しくしている最大の理由です。発疹が出た時点で子供を隔離しても、既にウイルスは周囲に広がってしまっている後、ということになります。この感染のタイムラグを理解しておくことが、りんご病という病気と正しく向き合う上で非常に重要です。
りんご病が最も人にうつりやすい時期