歩くと、かかとが痛い。その原因の多くは、足底腱膜炎ですが、時には、別の病気が隠れている可能性も考えなければなりません。もし、整形外科で足底腱膜炎の治療を受けているにもかかわらず、症状が一向に改善しない、あるいは痛みの性質が少し違うと感じる場合は、他の病気の可能性も視野に入れる必要があります。例えば、子供、特に成長期の活発な男の子で、かかとの後ろ側、アキレス腱の付着部あたりに痛みがある場合は、「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)/セーバー病」が考えられます。これは、成長期のかかとの骨(踵骨)の、まだ柔らかい骨端部(成長軟骨)に、運動による過度な負荷がかかることで、炎症が起こる、一種の成長痛です。ジャンプやダッシュを繰り返すスポーツをしている子供によく見られます。また、高齢者の方で、かかとの中央部、脂肪が薄くなった部分に、ジンジンとした痛みを感じる場合は、「踵部脂肪褥(しょうぶしぼうじょく)の萎縮」が原因であることがあります。かかとには、衝撃を吸収するための厚い脂肪のパッドがありますが、加齢と共にこの脂肪が萎縮し、クッション機能が低下することで、歩行時の衝撃が直接、骨に響いてしまうのです。さらに、注意が必要なのが、「踵骨の疲労骨折」です。マラソンなどの長距離走や、ジャンプを多用するスポーツ選手が、繰り返し骨に負荷をかけ続けることで、かかとの骨に微細なひびが入ってしまう状態です。安静にしていても、ジンジンとした痛みが続くのが特徴で、通常のレントゲンでは見つかりにくく、MRIなどの精密検査が必要になることもあります。その他にも、稀ではありますが、坐骨神経痛などの腰の病気が原因で、神経が圧迫され、かかとに関連痛として痛みが出ているケースや、関節リウマチなどの全身性の炎症性疾患の一症状として、かかとに痛みが生じることもあります。このように、かかとの痛みの原因は一つではありません。もし、症状が長引く、あるいは非典型的であると感じた場合は、再度、整形外科医に相談し、他の病気の可能性がないか、詳しく調べてもらうことが重要です。
かかとの痛み、足底腱膜炎以外の原因