ウイルス感染などの急性の炎症がないにもかかわらず、声がかすれたり、出にくくなったりする状態が、慢性的に続いている。このような場合、声帯そのものに、物理的な「できもの」ができている可能性があります。その代表的なものが、「声帯ポリープ」と「声帯結節(せいたいけっせつ)」です。これらは、どちらも声の乱用、つまり「声の使いすぎ」が、その大きな原因となります。まず、「声帯ポリープ」は、声帯の粘膜に、血豆のような、赤くて柔らかい、キノコ状の隆起ができる病気です。カラオケで絶叫したり、スポーツ観戦で大声で応援したり、あるいは風邪で激しく咳き込んだりした際に、声帯の粘膜の血管が破れて内出血を起こし、その血腫(血の塊)がポリープ状に変化したものと考えられています。通常、左右どちらか一方の声帯にできることが多く、声がかすれる、声が出しにくいといった症状が現れます。一方、「声帯結節」は、声帯の中央部分の粘膜が、硬いペンダコのように、両側性に硬くなる病気です。これは、日常的に、そして慢性的に、声帯に負担をかけ続けることで発症します。例えば、学校の先生や保育士、歌手、アナウンサーといった、声を職業とする方々によく見られます。常に大きな声を出したり、長時間話し続けたりすることで、左右の声帯が最も強くぶつかり合う部分の粘膜が、だんだんと硬くなってしまうのです。そのため、「教師結節」や「歌手結節」といった別名もあります。声帯ポリープも声帯結節も、診断のためには、「耳鼻咽喉科」での喉頭ファイバースコープ検査が不可欠です。声帯の状態を直接観察し、ポリープや結節の有無、大きさ、形などを確認します。治療は、どちらの病気も、まずは声の安静や、正しい発声法を身につけるための「音声治療(リハビリテーション)」といった、保存的な治療から開始します。炎症を抑えるために、吸入療法なども行われます。しかし、これらの保存療法で改善が見られない場合や、ポリープが大きくて声への影響が強い場合には、手術による切除が検討されることもあります。声のかすれが長引く場合は、単なる声枯れと放置せず、一度、耳鼻咽喉科で声帯の状態をチェックしてもらいましょう。