夏の暑い日、自分の体が熱中症になりかけていないか、その危険度を知るための簡単なセルフチェックの方法があります。その一つが、「トイレの回数」と「尿の色」を観察することです。これは、体内の水分が足りているかどうかを判断するための、非常に分かりやすいバロメーターとなります。まず、健康な状態であれば、人は一日に5〜8回程度、トイレに行きます。もし、あなたが炎天下で活動した後や、汗をたくさんかいた後に、「そういえば、ここ数時間、全くトイレに行っていないな」と感じたら、それは体内の水分が不足し、脱水状態に陥り始めているサインです。体は、これ以上水分を失わないように、尿の生成を抑制しているのです。この段階は、熱中症の軽症レベル(Ⅰ度)にあたり、めまいや立ちくらみ、こむら返りといった症状が現れ始めます。この時点で、涼しい場所に移動し、経口補水液などで水分と塩分を補給すれば、回復が期待できます。次に、注意すべきなのが、この記事のテーマでもある「トイレの回数が増える」という逆のパターンです。汗をかいたからと、水だけをがぶ飲みしていると、一時的にトイレが近くなることがあります。しかし、この時の尿の色をチェックしてみてください。もし、「色がほとんどついていない、水のように無色透明な尿」がたくさん出ているのであれば、それは塩分が不足し、体内に水分を保持できていない「隠れ脱水」のサインかもしれません。そして、最も危険なサインは、「尿の量が極端に少なくなり、その色が濃い黄色や茶色っぽくなっている」状態です。これは、体が水分不足の危機的状況にあり、腎臓が必死に水分を再吸収して、尿を極限まで濃縮している証拠です。この状態は、熱中症の中等症から重症(Ⅱ度〜Ⅲ度)レベルに相当し、頭痛や吐き気、倦怠感が強くなり、意識障害へと進展する危険性があります。このように、トイレの回数と尿の色は、あなたの体の水分バランスを雄弁に物語っています。特に、屋外で活動する際には、時々、自分の尿の状態をチェックする習慣をつけることが、熱中症の重症化を防ぐための、簡単で効果的な自己管理術となるのです。