夏の健康管理において、熱中症予防のための水分補給が不可欠であることは、もはや常識となっています。しかし、ただやみくもに水を飲めば良いというわけではありません。間違った水分補給は、かえって体調を崩したり、前述したような「トイレの回数が増える」といった、脱水を助長する事態を招いたりする危険性があります。では、熱中症を効果的に予防するための、正しい水分補給とはどのようなものでしょうか。まず、最も重要なポイントは、「水分」と「塩分(ナトリウム)」を同時に補給することです。汗を大量にかくような状況では、水分だけでなく、塩分も失われています。この失われた塩分を補わずに水だけを飲むと、血液が薄まり、体はそれを元に戻そうとして、せっかく飲んだ水分を尿として排出してしまいます。これを防ぐために、水分補給の際には、塩分も一緒に摂ることを意識しましょう。そのために最も適しているのが、「経口補水液」や「スポーツドリンク」です。これらは、水分と電解質(ナトリウムなど)、そして糖分が、体に最も効率よく吸収されるバランスで配合されています。特に、すでに軽い脱水症状が起きている場合には、経口補水液が最適です。また、日常生活の中では、麦茶や水と一緒に、塩分を含んだタブレットや飴をなめたり、食事の際に味噌汁やスープを一杯加えたりするだけでも、効果的な塩分補給になります。次に大切なのが、「飲むタイミング」と「量」です。喉が渇いたと感じた時には、すでに体は水分不足の状態にあります。「喉が渇く前に、こまめに」飲むのが、水分補給の鉄則です。一度にがぶ飲みするのではなく、コップ一杯程度の量を、1〜2時間おきに、意識的に飲むようにしましょう。特に、起床時、運動の前後、入浴の前後、就寝前は、体が水分を失いやすいタイミングなので、忘れずに補給することが大切です。利尿作用のあるコーヒーや緑茶、アルコール類は、水分補給には適していません。これらを飲んだ場合は、それ以上に多くの水分を摂るように心がけてください。正しい水分補給は、夏の体を守るための、最も基本的で強力な武器となるのです。
熱中症対策、正しい水分補給の方法