歩くと痛いかかとの症状で、整形外科を受診した場合、一体、どのような治療が行われるのでしょうか。足底腱膜炎などの、かかとの痛みの治療は、多くの場合、手術を必要としない「保存療法」が中心となります。その目的は、炎症を抑えて痛みを和らげること、そして、原因となっている足底腱膜への負担を取り除くことです。まず、痛みが強い急性期には、「薬物療法」が行われます。炎症と痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や、湿布、塗り薬などが処方されます。これにより、つらい痛みをコントロールし、日常生活の支障を軽減します。次に、治療の基本となるのが、「理学療法」です。これには、様々なアプローチが含まれます。理学療法士の指導のもと、硬くなってしまった足底腱膜や、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を効果的に伸ばすための「ストレッチング指導」が行われます。これは、治療の根幹をなす、非常に重要な要素です。また、物理療法として、超音波を患部に当てて血行を促進し、組織の修復を早める「超音波療法」や、電気刺激による治療が行われることもあります。さらに、歩行時の衝撃を和らげ、足のアーチをサポートするための「装具療法」も、有効な治療法の一つです。前述したような、患者さん一人ひとりの足に合わせた「インソール(足底挿板)」を作成したり、睡眠中に足首を固定して、足底腱膜が縮こまるのを防ぐ「ナイトスプリント」という装具を用いたりすることがあります。これらの保存療法を数ヶ月間、根気よく続けても、症状がなかなか改善しない、非常に頑固な痛みの場合には、より進んだ治療が検討されます。その一つが、「ステロイド注射」です。痛みが最も強い部分に、局所麻酔薬とステロイド薬を注射することで、強力に炎症を抑える方法ですが、腱を脆くするリスクもあるため、頻繁には行われません。そして、最近注目されているのが、「体外衝撃波治療(ESWT)」です。これは、患部に特殊な衝撃波を照射することで、痛みを伝える神経を変性させ、組織の修復を促すという、新しい治療法です。保存療法で改善しない難治性の足底腱膜炎に対して、良好な治療成績が報告されています。このように、整形外科での治療は、多角的なアプローチで、患者さんの痛みの軽減と、根本的な原因の解決を目指していきます。