首は、リンパ節や甲状腺、唾液腺といった、様々な重要な器官が集中している場所です。そのため、「首のしこり」と一言で言っても、その原因は非常に多岐にわたります。どの場所に、どのような性質のしこりができているかによって、考えられる病気も、そして受診すべき診療科も異なってきます。首のしこりで、まず相談すべき診療科として最も一般的なのが、「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳、鼻、そして喉(咽頭・喉頭)を含む、首から上の領域(頭頸部)の病気を専門とします。首のしこりの原因として最も多いのが、風邪などの感染症に伴う「リンパ節の腫れ(リンパ節炎)」です。リンパ節は、体内に侵入した細菌やウイルスと戦う免疫器官であり、炎症が起こると腫れて、しこりのように感じられることがあります。また、耳の下や顎の下にできたしこりは、「唾液腺」の腫瘍や、唾石症といった病気の可能性も考えられます。耳鼻咽喉科では、ファイバースコープで鼻や喉の奥を観察したり、超音波検査でしこりの性状を調べたりして、これらの病気の診断を行います。次に、喉仏の下あたり、首の前面にしこりを感じる場合は、「甲状腺」の病気が疑われます。甲状腺の腫瘍(良性・悪性)や、バセドウ病、橋本病といった甲状腺機能の異常に伴って、甲状腺全体が腫れることもあります。このような場合は、耳鼻咽喉科でも診察は可能ですが、より専門的な診療科として「内分泌内科(代謝内科)」が挙げられます。血液検査で甲状腺ホルモンの値を測定し、専門的な治療を行います。さらに、皮膚のすぐ下にできた、動くしこりの場合は、粉瘤(アテローム)などの皮下腫瘍の可能性があり、この場合は「皮膚科」や「形成外科」が専門となります。このように、首のしこりは原因が様々で、鑑別が難しいケースも少なくありません。もし、どこを受診すれば良いか迷った場合は、まずはカバー範囲の広い耳鼻咽喉科に相談してみるのが、適切な診断への近道となるでしょう。