体にできたしこりで、意を決して病院を受診した際、「一体、どんな検査をされるのだろう」と、不安に感じる方は少なくないでしょう。しかし、いきなり痛い検査や大掛かりな検査をされるわけではありません。通常、診断は、段階を踏んで、丁寧に進められます。その一般的な流れを知っておくことで、少しでも安心して診察に臨むことができるはずです。まず、診察室で最初に行われるのが、「問診」と「視診・触診」です。医師は、しこりにいつ気づいたか、大きさの変化はあるか、痛みなどの他の症状はあるか、といったことを詳しく聞き取ります。そして、しこりのある場所を直接見て(視診)、指で触って(触診)、その大きさ、硬さ、動き(可動性)、表面の性状、熱感の有無などを、専門家の手で慎重に確認します。この診察だけで、ある程度の見当がつくことも少なくありません。次に、しこりの内部の状態を、より客観的に評価するために行われるのが、「画像検査」です。最も手軽で、体に負担なく行えるのが、「超音波(エコー)検査」です。これは、しこりに超音波を当て、その反響を画像化する検査で、しこりが液体で満たされた「のう胞」なのか、細胞の塊である「固形腫瘍」なのかを区別したり、大きさや形を正確に測定したりすることができます。乳房や甲状腺、皮下のしこりの検査で、広く用いられます。しこりが体の深いところにある場合や、周囲の臓器との関係を詳しく知りたい場合には、「CT検査」や「MRI検査」が行われることもあります。これらは、体を輪切りにしたような詳細な断層画像を撮影する検査で、より多くの情報を得ることができます。そして、これらの画像検査の結果、悪性の可能性が否定できないと判断された場合に行われるのが、確定診断のための「生検(組織診)」です。これは、しこりに細い針を刺したり、あるいは一部を小さく切開したりして、しこりの組織の一部を採取し、それを顕微鏡で詳しく調べる「病理検査」に提出するというものです。この病理検査によって、初めて、そのしこりが良性なのか悪性なのか、そして悪性であればどのような種類のがん細胞なのか、という最終的な診断が確定します。このように、しこりの診断は、丁寧なステップを踏んで進められます。不安なことは、その都度、医師に質問しながら、一緒に病気の正体を突き止めていきましょう。