インフルエンザが疑われる症状で医療機関を受診すると、多くの場合、「迅速抗原検査」が行われます。これは、鼻や喉の奥から採取した粘液を使って、インフルエンザウイルスの存在を調べる検査です。しかし、この検査は、受けるタイミングを間違えると、本当は感染しているのに、結果が「陰性」と出てしまう(偽陰性)ことがあります。適切な診断と治療のために、検査を受けるべき最適なタイミングを知っておくことが重要です。インフルエンザの迅速抗原検査は、検体の中に、ある一定量以上のウイルスが含まれていないと、陽性反応が出ません。インフルエンザウイルスは、発症後、体内で急速に増殖していきます。そのため、熱が出始めてすぐ、まだ体内のウイルス量が少ない段階で検査を受けても、キットがウイルスを検知できず、陰性と判定されてしまうことがあるのです。一般的に、検査で陽性反応が出やすくなるのは、発熱などの症状が現れてから「12時間以上経過」してからとされています。そして、ウイルス量がピークに達するのは、発症後24〜72時間頃です。したがって、検査を受ける最も適切なタイミングは、「発症後12時間から48時間以内」と言えるでしょう。この時間帯に受診すれば、高い確率で正確な診断が期待でき、かつ、抗インフルエンザ薬の効果が最も高いとされる「発症後48時間以内」の治療開始にも、十分に間に合います。逆に、あまり早く受診しすぎると、たとえインフルエンザであっても、検査結果が陰性となり、「インフルエンザではないでしょう」と診断され、抗ウイルス薬が処方されないまま帰宅することになりかねません。そして、翌日になっても症状が改善せず、再び受診して、ようやく陽性と診断される、という二度手間になってしまうこともあります。もちろん、高熱でぐったりしている、呼吸が苦しいなど、症状が非常に重い場合は、この限りではありません。時間を待たずに、すぐに医療機関を受診してください。しかし、比較的状態が安定しているのであれば、慌てて夜間の救急外来に駆け込むよりも、一晩様子を見て、翌日の日中に、かかりつけの内科や小児科を受診する方が、より確実な診断に繋がることが多いのです。