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休日や夜間にインフルエンザを発症したら
インフルエンザの症状は、しばしば、夕方から夜間にかけて、あるいは休日に、急激に悪化することがあります。高熱と体の痛みで、一刻も早く楽になりたいのに、かかりつけのクリニックは閉まっている。そんな時、「救急外来へ行くべきか、それとも朝まで我慢すべきか」と、多くの方が判断に迷うことでしょう。この判断は、患者さんの年齢や基礎疾患の有無、症状の重さによって異なります。まず、基本的に、健康な成人で、症状が発熱や関節痛だけであり、水分が摂れていて、意識がはっきりしている場合は、必ずしも夜間に救急外来を受診する必要はありません。抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に服用を開始すれば効果が期待できるため、翌朝に医療機関を受診するのでも、十分に間に合います。むしろ、軽症の状態で救急外来を受診することは、重症患者の治療の妨げになったり、他の感染症をもらってしまったりするリスクもあります。自宅で、市販のアセトアミノフェン系の解熱鎮痛薬を服用し、十分な水分補給と休息をとりながら、朝を待つのが賢明な選択です。しかし、中には、緊急で受診すべき「危険なサイン」も存在します。以下のような症状が見られる場合は、ためらわずに、休日・夜間急患センターや、救急外来を受診してください。呼吸困難: 息が苦しい、肩で息をしている、唇の色が紫色になる(チアノーゼ)。意識障害: 呼びかけに反応しない、意味不明な言動がある、けいれんを起こした。激しい脱水症状: 水分が全く摂れない、ぐったりして動けない、尿がほとんど出ていない。特に、高齢者や、心臓病、呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を持っている方、妊娠中の方は、重症化するリスクが高いため、早めの受診が推奨されます。また、小さなお子様の場合は、前述した「インフルエンザ脳症」の初期症状(意識障害、けいれん、異常言動)に、細心の注意を払う必要があります。判断に迷った場合は、地域の救急相談センター(#7119など)に電話で相談し、専門家のアドバイスを仰ぐのも良いでしょう。我慢と受診のバランスを適切に見極めることが大切です。
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妊娠中にりんご病がうつると危険?
りんご病は、通常は軽い症状で治まる病気ですが、一つだけ、特に注意が必要なケースがあります。それが、「妊娠中の女性」が感染した場合です。妊娠中に、りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に初めて感染すると、ウイルスが胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも感染してしまう(胎内感染)可能性があります。全てのケースで問題が起こるわけではありませんが、一部の赤ちゃんに、深刻な影響を及ぼすことがあるため、正しい知識を持っておくことが非常に重要です。ウイルスに感染した赤ちゃんは、重度の貧血を起こし、その結果、体全体がむくんでしまう「胎児水腫」という状態になることがあります。また、心臓に水が溜まる心不全などを引き起こし、最悪の場合、流産や死産に至る危険性も報告されています。特に、妊娠初期から中期(妊娠20週頃まで)に母親が感染した場合に、そのリスクが高まるとされています。ただし、ここで過度に心配しすぎる必要もありません。まず、日本の成人女性の多くは、子供の頃に知らないうちにりんご病に感染し、既に抗体(免疫)を持っていると言われています。抗体を持っている場合は、たとえウイルスに接触しても、再感染したり、赤ちゃんに影響が出たりする心配は、ほとんどありません。また、妊娠中に初めて感染したとしても、必ずしも赤ちゃんに感染するわけではなく、さらに赤ちゃんに感染した場合でも、全てが胎児水腫になるわけではありません。多くの場合は、無事に生まれてきます。もし、妊娠中にりんご病が流行している、あるいは家族がりんご病にかかってしまった、などの状況で不安を感じた場合は、まず、かかりつけの産婦人科医に相談してください。産婦人科では、血液検査でりんご病の抗体の有無を調べることができます。抗体がない(感染のリスクがある)と判断された場合は、人混みを避けたり、マスクや手洗いを徹底したりといった、感染予防策をより一層、厳重に行う必要があります。そして、万が一、感染が疑われる場合は、超音波検査(エコー検査)で、お腹の赤ちゃんの状態を注意深く、定期的に観察していくことになります。正しい知識を持ち、冷静に、そして速やかに専門医に相談することが、母子共に健康を守るための最も大切な行動です。