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声が出ない!まず何科へ相談すべきか
朝、目が覚めたら、声が全く出ない。あるいは、話そうとしても、かすれた空気の音しか出てこない。このような「声が出ない」という症状(失声)は、日常生活や仕事に大きな支障をきたす、非常につらく、そして不安なものです。風邪が原因だろうと自己判断してしまいがちですが、その背景には、様々な病気が隠れている可能性もあります。いざ、この症状で病院へ行こうと考えた時、多くの人が「何科を受診すれば良いのだろう」と迷うことでしょう。このような、声に関するトラブルを専門的に診療する中心的な科は、「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳、鼻、そして声を作り出す重要な器官である喉(咽頭・喉頭)の病気を専門とするエキスパートです。声が出なくなる原因の多くは、声帯に何らかの異常が起きていることによるものです。耳鼻咽喉科では、「喉頭ファイバースコープ」という、鼻から挿入する細いカメラを使って、喉の奥にある声帯の状態を直接、詳細に観察することができます。声帯が赤く腫れていないか、ポリープや結節といった「できもの」はないか、声帯の動き(麻痺)に異常はないか、といったことを正確に診断できるのです。これは、一般的な内科の診察では難しい、耳鼻咽喉科ならではの専門的な診察です。声が出なくなる最も一般的な原因は、風邪のウイルスなどによる急性の炎症である「急性声帯炎」ですが、他にも、声の使いすぎによる声帯ポリープや声帯結節、あるいは反回神経麻痺という神経の病気、さらには喉頭がんといった、重篤な病気が原因である可能性もゼロではありません。これらの病気を正確に鑑別し、適切な治療方針を立てるためには、まず、声帯の状態を直接見ることができる耳鼻咽-科を受診することが、最も確実で安心な第一歩と言えるでしょう。自己判断で様子を見たり、間違ったケアをしたりせず、まずは声の専門家である耳鼻咽喉科医に相談してください。
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トイレの回数でわかる?熱中症の危険度セルフチェック
夏の暑い日、自分の体が熱中症になりかけていないか、その危険度を知るための簡単なセルフチェックの方法があります。その一つが、「トイレの回数」と「尿の色」を観察することです。これは、体内の水分が足りているかどうかを判断するための、非常に分かりやすいバロメーターとなります。まず、健康な状態であれば、人は一日に5〜8回程度、トイレに行きます。もし、あなたが炎天下で活動した後や、汗をたくさんかいた後に、「そういえば、ここ数時間、全くトイレに行っていないな」と感じたら、それは体内の水分が不足し、脱水状態に陥り始めているサインです。体は、これ以上水分を失わないように、尿の生成を抑制しているのです。この段階は、熱中症の軽症レベル(Ⅰ度)にあたり、めまいや立ちくらみ、こむら返りといった症状が現れ始めます。この時点で、涼しい場所に移動し、経口補水液などで水分と塩分を補給すれば、回復が期待できます。次に、注意すべきなのが、この記事のテーマでもある「トイレの回数が増える」という逆のパターンです。汗をかいたからと、水だけをがぶ飲みしていると、一時的にトイレが近くなることがあります。しかし、この時の尿の色をチェックしてみてください。もし、「色がほとんどついていない、水のように無色透明な尿」がたくさん出ているのであれば、それは塩分が不足し、体内に水分を保持できていない「隠れ脱水」のサインかもしれません。そして、最も危険なサインは、「尿の量が極端に少なくなり、その色が濃い黄色や茶色っぽくなっている」状態です。これは、体が水分不足の危機的状況にあり、腎臓が必死に水分を再吸収して、尿を極限まで濃縮している証拠です。この状態は、熱中症の中等症から重症(Ⅱ度〜Ⅲ度)レベルに相当し、頭痛や吐き気、倦怠感が強くなり、意識障害へと進展する危険性があります。このように、トイレの回数と尿の色は、あなたの体の水分バランスを雄弁に物語っています。特に、屋外で活動する際には、時々、自分の尿の状態をチェックする習慣をつけることが、熱中症の重症化を防ぐための、簡単で効果的な自己管理術となるのです。
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風邪で蕁麻疹?大人が注意すべき体のサイン
熱っぽくて体もだるい、喉も痛い。典型的な風邪の症状に悩まされている最中、あるいは治りかけの頃に、突然、体中に蚊に刺されたような、赤くて盛り上がった発疹が現れ、強いかゆみに襲われる。このような経験はありませんか。風邪という呼吸器の症状と、蕁麻疹(じんましん)という皮膚の症状。一見、関係ないように思えるこの二つの組み合わせは、実は、大人の体調不良において、しばしば見られる現象です。風邪をひくと、なぜ蕁麻疹が出ることがあるのでしょうか。その背景には、風邪の原因であるウイルスや細菌と、私たちの体の「免疫システム」との戦いが深く関わっています。風邪をひくと、体内に侵入したウイルスなどの病原体を排除しようと、免疫システムが活発に働き始めます。しかし、この免疫システムが、過剰に反応してしまったり、正常に機能しなくなったりすると、皮膚の内部にある「マスト細胞」という細胞を、誤って刺激してしまうことがあります。マスト細胞が刺激を受けると、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます。このヒスタミンが、皮膚の血管を拡張させ、血液中の水分(血漿)を血管の外へ漏れ出させることで、皮膚に赤みと盛り上がり(膨疹)を生み出し、同時に、知覚神経を刺激して、強いかゆみを引き起こすのです。これが、蕁麻疹の正体です。つまり、風邪による蕁麻疹は、病原体そのものが皮膚に症状を起こしているのではなく、病原体と戦う過程で、免疫システムが混乱を起こした結果として現れる、一種の「アレルギー反応」と考えることができます。また、風邪をひいた時の、発熱や体力の消耗、精神的なストレスといった、体全体のコンディションの低下も、免疫のバランスを崩し、蕁麻疹を発症しやすくする一因となります。風邪の症状と共に、あるいはその前後に蕁麻疹が現れたら、それは体が「今、免疫が正常に働いていないよ」と教えてくれている、重要なサインなのです。
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家庭内でりんご病がうつるのを防ぐには
子供が保育園や学校でりんご病をもらってきてしまった時、次に心配になるのが、兄弟や親といった、他の家族への感染でしょう。家庭内という濃厚な接触環境では、感染のリスクは高くなります。完全に感染を防ぐことは難しいかもしれませんが、基本的な感染対策を徹底することで、そのリスクを少しでも減らすことは可能です。まず、最も重要な対策は「手洗い」です。りんご病のウイルスは、感染者の鼻水や唾液、そしてそれに触れた手に付着しています。感染した子供の世話をした後や、食事の前、トイレの後など、こまめに石鹸と流水で、丁寧に手を洗うことを家族全員で習慣づけましょう。アルコールによる手指消毒も、補助的に有効です。次に、感染者と他の家族との「タオルの共用をやめる」ことも大切です。洗顔用のタオルや、お風呂で使うバスタオルなどを介して、ウイルスが広がる可能性があります。それぞれの専用のタオルを用意し、洗濯物も、可能であれば分けて洗うのが望ましいでしょう。また、感染者が使用した「食器やコップ」も、共有しないように注意が必要です。使用後は、すぐに洗浄・消毒するようにします。そして、りんご病は飛沫感染でもうつるため、「換気」も重要なポイントです。部屋の窓を定期的に開けて、空気の入れ換えを行い、ウイルスが室内に滞留するのを防ぎましょう。感染した子供が咳やくしゃみをする場合は、マスクを着用させたり、ティッシュで口と鼻を覆う「咳エチケット」を教えたりすることも、飛沫の拡散を防ぐ上で効果的です。特に、家庭内に「妊娠している可能性のある女性」がいる場合は、最大限の注意が必要です。妊婦さんは、できるだけ感染した子供との接触を避け、看病は他の家族が中心となって行うなどの配慮が求められます。これらの対策は、りんご病だけでなく、他の多くの感染症予防にも共通する、基本的な衛生管理です。完璧に防ぐことはできなくても、日々の小さな心がけの積み重ねが、家族全体の健康を守ることに繋がるのです。
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声が出ない原因、最も多いのは急性声帯炎
突然、声が出なくなった、あるいはひどいかすれ声(嗄声)になってしまった。このような症状で耳鼻咽喉科を受診した際に、最も多く診断される病気が「急性声帯炎(きゅうせいせいたいえん)」です。これは、声を出すための器官である「声帯」に、急性の炎症が起きた状態のことを指します。その原因のほとんどは、風邪の原因となるライノウイルスやアデノウイルスといった、ウイルスへの感染です。風邪をひくと、鼻水や喉の痛みといった上気道の症状が出ますが、その炎症が、さらに奥にある声帯にまで及んでしまうことがあるのです。声帯は、左右一対の、ひだ状の組織です。普段、呼吸をしている時は開いていますが、声を出す時には、左右の声帯がピッタリと閉じて、肺から送られてくる呼気によって細かく振動することで、声の元となる音(原音)を生み出しています。ところが、急性声帯炎になると、ウイルス感染によって声帯の粘膜が充血し、赤く腫れ上がってしまいます。腫れて分厚くなった声帯は、正常に閉じることができなくなり、また、スムーズに振動することもできなくなります。その結果、声がかすれたり、あるいは全く声が出なくなってしまったりするのです。急性声帯炎の症状は、声がれや失声のほかに、喉の痛みや、咳、痰などを伴うことが一般的です。治療の基本、そして最も重要なことは、何よりも「声の安静(沈黙療法)」です。炎症を起こしている声帯を、無理に振動させようとすることは、症状をさらに悪化させ、治りを遅くする原因となります。話さなければならない状況でも、大声を出すのはもちろんのこと、ひそひそ声(囁き声)も、かえって声帯に負担をかけるため、避けるべきです。筆談などを用いて、できる限り声帯を休ませることに専念しましょう。それに加えて、耳鼻咽喉科では、炎症を抑えるための薬(消炎薬)の処方や、喉の乾燥を防ぎ、炎症を和らげるための「ネブライザー治療(薬液の吸入)」などが行われます。通常、適切な安静と治療を行えば、1〜2週間程度で声は回復していきます。風邪をひいて声がおかしくなったら、無理をせず、声帯をしっかりと休ませてあげることが、早期回復への一番の近道です。
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熱中症対策、正しい水分補給の方法
夏の健康管理において、熱中症予防のための水分補給が不可欠であることは、もはや常識となっています。しかし、ただやみくもに水を飲めば良いというわけではありません。間違った水分補給は、かえって体調を崩したり、前述したような「トイレの回数が増える」といった、脱水を助長する事態を招いたりする危険性があります。では、熱中症を効果的に予防するための、正しい水分補給とはどのようなものでしょうか。まず、最も重要なポイントは、「水分」と「塩分(ナトリウム)」を同時に補給することです。汗を大量にかくような状況では、水分だけでなく、塩分も失われています。この失われた塩分を補わずに水だけを飲むと、血液が薄まり、体はそれを元に戻そうとして、せっかく飲んだ水分を尿として排出してしまいます。これを防ぐために、水分補給の際には、塩分も一緒に摂ることを意識しましょう。そのために最も適しているのが、「経口補水液」や「スポーツドリンク」です。これらは、水分と電解質(ナトリウムなど)、そして糖分が、体に最も効率よく吸収されるバランスで配合されています。特に、すでに軽い脱水症状が起きている場合には、経口補水液が最適です。また、日常生活の中では、麦茶や水と一緒に、塩分を含んだタブレットや飴をなめたり、食事の際に味噌汁やスープを一杯加えたりするだけでも、効果的な塩分補給になります。次に大切なのが、「飲むタイミング」と「量」です。喉が渇いたと感じた時には、すでに体は水分不足の状態にあります。「喉が渇く前に、こまめに」飲むのが、水分補給の鉄則です。一度にがぶ飲みするのではなく、コップ一杯程度の量を、1〜2時間おきに、意識的に飲むようにしましょう。特に、起床時、運動の前後、入浴の前後、就寝前は、体が水分を失いやすいタイミングなので、忘れずに補給することが大切です。利尿作用のあるコーヒーや緑茶、アルコール類は、水分補給には適していません。これらを飲んだ場合は、それ以上に多くの水分を摂るように心がけてください。正しい水分補給は、夏の体を守るための、最も基本的で強力な武器となるのです。
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声の酷使が原因?声帯ポリープと声帯結節
ウイルス感染などの急性の炎症がないにもかかわらず、声がかすれたり、出にくくなったりする状態が、慢性的に続いている。このような場合、声帯そのものに、物理的な「できもの」ができている可能性があります。その代表的なものが、「声帯ポリープ」と「声帯結節(せいたいけっせつ)」です。これらは、どちらも声の乱用、つまり「声の使いすぎ」が、その大きな原因となります。まず、「声帯ポリープ」は、声帯の粘膜に、血豆のような、赤くて柔らかい、キノコ状の隆起ができる病気です。カラオケで絶叫したり、スポーツ観戦で大声で応援したり、あるいは風邪で激しく咳き込んだりした際に、声帯の粘膜の血管が破れて内出血を起こし、その血腫(血の塊)がポリープ状に変化したものと考えられています。通常、左右どちらか一方の声帯にできることが多く、声がかすれる、声が出しにくいといった症状が現れます。一方、「声帯結節」は、声帯の中央部分の粘膜が、硬いペンダコのように、両側性に硬くなる病気です。これは、日常的に、そして慢性的に、声帯に負担をかけ続けることで発症します。例えば、学校の先生や保育士、歌手、アナウンサーといった、声を職業とする方々によく見られます。常に大きな声を出したり、長時間話し続けたりすることで、左右の声帯が最も強くぶつかり合う部分の粘膜が、だんだんと硬くなってしまうのです。そのため、「教師結節」や「歌手結節」といった別名もあります。声帯ポリープも声帯結節も、診断のためには、「耳鼻咽喉科」での喉頭ファイバースコープ検査が不可欠です。声帯の状態を直接観察し、ポリープや結節の有無、大きさ、形などを確認します。治療は、どちらの病気も、まずは声の安静や、正しい発声法を身につけるための「音声治療(リハビリテーション)」といった、保存的な治療から開始します。炎症を抑えるために、吸入療法なども行われます。しかし、これらの保存療法で改善が見られない場合や、ポリープが大きくて声への影響が強い場合には、手術による切除が検討されることもあります。声のかすれが長引く場合は、単なる声枯れと放置せず、一度、耳鼻咽喉科で声帯の状態をチェックしてもらいましょう。
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歩くと痛いかかと、私が足底腱膜炎を克服した話
それは、私が40代半ばに差し掛かった頃のことでした。健康のためにと、週末にジョギングを始めたのですが、数ヶ月経ったある朝、ベッドから降りた第一歩で、右のかかとに、まるで釘を踏んだかのような、鋭い痛みが走りました。あまりの痛さに、思わず「うっ」と声が出たほどです。その日は、歩いているうちに痛みが和らいだので、気にせずに過ごしましたが、翌朝も、またその次の朝も、同じ激痛が私を襲いました。特に、長時間デスクワークをした後、立ち上がって歩き出す瞬間も、同様に痛みます。これはおかしい。そう思い、私は近所の整形外科を受診しました。レントゲンを撮り、医師に症状を話すと、「典型的な足底腱膜炎ですね」と診断されました。ランニングで、かかとに負担がかかりすぎたのが原因だろうとのことでした。医師からは、まずジョギングを休むこと、そして、足の裏のストレッチを毎日行うようにと指導されました。その日から、私のかかととの闘いが始まりました。朝晩、お風呂上がりに、教わったストレッチを欠かさず行いました。足の指を反らせたり、アキレス腱を伸ばしたり。最初は、硬くなった足の裏が悲鳴を上げるようでしたが、続けるうちに、少しずつ伸びるようになっていくのが分かりました。また、通勤用の革靴も、クッション性の高いスニーカーに変えました。そして、日中は、会社のデスクの下にゴルフボールを置いておき、仕事の合間に、足の裏でコロコロと転がして、マッサージをすることを日課にしました。正直、最初の1ヶ月は、あまり劇的な変化はありませんでした。朝の第一歩の痛みは、相変わらずです。しかし、諦めずにストレッチとマッサージを続けていると、2ヶ月目が経つ頃から、朝の痛みが、少しずつ和らいでいることに気づいたのです。あの「釘を踏むような」激痛が、「少し痛いな」くらいに変わっていました。そして、3ヶ月が経つ頃には、日常生活で痛みを感じることは、ほとんどなくなっていました。完全に痛みが消えるまでには、半年近くかかりましたが、地道なセルフケアの積み重ねが、確実に結果に繋がったのだと実感しています。この経験を通じて、私は、自分の体と向き合い、根気よくケアを続けることの大切さを学びました。
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大人がりんご病にうつるとどうなる?
りんご病は、一般的に子供の病気として知られており、子供がかかった場合は、頬が赤くなる以外は比較的軽い症状で済むことがほとんどです。しかし、子供の頃に感染せず、免疫を持っていない大人が、家庭内や職場でウイルスに感染してしまうと、子供とは全く異なる、つらい症状に見舞われることがあります。大人がりんご病に感染した場合、まず、子供ではあまり見られない、発熱や強い倦怠感、頭痛、筋肉痛といった、インフルエンザに似た全身症状が強く現れることがあります。そして、りんご病の特徴である発疹も、子供のように頬だけが赤くなるのではなく、全身、特に手足にレース編み模様の紅斑がより顕著に、そして広範囲に現れる傾向があります。しかし、大人のりんご病で最もつらい症状として知られているのが、「激しい関節痛」です。手首や足首、膝、そして特に手指の関節が、朝、こわばって動かしにくくなったり、ズキズキと痛んだりします。この関節痛は非常に強く、ペンが持てない、スマートフォンの操作ができない、歩くのが辛いなど、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。この症状は、関節リウマチと非常によく似ているため、最初はりんご病と気づかれずに、リウマチを疑われて検査を受けるケースもあるほどです。この関節痛は、発疹が消えた後も、数週間から、長い人では数ヶ月にわたって続いてしまうこともあり、多くの大人を悩ませます。なぜ、大人がかかると、このようなつらい症状が出るのでしょうか。それは、大人の成熟した免疫システムが、ウイルスに対してより強く、そして過剰に反応してしまうためではないかと考えられています。この強い免疫反応が、関節などで激しい炎症を引き起こし、痛みとなって現れるのです。もし、お子さんがりんご病にかかった後、ご自身に原因不明の関節痛や発疹が現れた場合は、りんご病にうつった可能性を考え、内科や皮膚科を受診することをお勧めします。
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りんご病と診断された、私の関節痛体験
先月、小学生の息子が、頬を真っ赤にして学校から帰ってきました。小児科で「りんご病ですね」と診断され、熱もなく元気だったので、特に心配はしていませんでした。しかし、その1週間後、今度は私の体に異変が起きたのです。最初は、朝起きた時の両手の指のこわばりでした。指がむくんだように感じ、握りしめるのが困難なのです。そのうち、手首や足首にも、ズキズキとした痛みが広がり始めました。まるで、インフルエンザの時のような、関節の痛みです。発疹も熱もなかったので、最初は単なる疲れや、歳のせいかと思っていました。しかし、その痛みは日に日に強くなり、ついには、朝、ベッドから起き上がるのさえ辛い状態になってしまいました。パソコンのキーボードを打つのも、スマートフォンの画面をタップするのも、指の関節に激痛が走ります。あまりの痛みに、私は整形外科を受診しました。レントゲンを撮っても、骨に異常はありません。「関節リウマチの可能性も考えて、血液検査をしましょう」と医師に言われ、私の心は不安でいっぱいになりました。そんな時、ふと、息子のりんご病のことを思い出し、医師にそのことを話してみました。すると、医師は「ああ、それなら、りんご病がうつったのかもしれませんね。大人がかかると、ひどい関節痛が出ることがあるんですよ」と教えてくれました。その後の血液検査で、やはり私は、りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に感染していることが判明したのです。原因がはっきりしたことで、少しだけ安心しましたが、関節痛のつらさは続きました。結局、痛み止めの薬を飲みながら、日常生活の動作もままならない状態が2週間ほど続き、完全に痛みがなくなるまでには、1ヶ月以上もかかりました。子供の軽い病気だとばかり思っていたりんご病が、大人にとっては、これほどまでにつらい症状を引き起こすとは、夢にも思っていませんでした。この経験を通じて、感染症を甘く見てはいけないこと、そして、自分の体に異変を感じたら、その前に家族にどんな病気があったかを医師に伝えることの重要性を、痛感しました。