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朝の一歩が痛い!かかとを守るための生活習慣
朝、ベッドから降りた第一歩目に、かかとに走る激痛。足底腱膜炎に悩む多くの人が、毎日、この憂鬱な瞬間と向き合っています。このつらい症状を改善し、再発を防ぐためには、整形外科での治療やセルフケアに加え、日常生活の中に、かかとへの負担を減らすための「生活習慣」を組み込むことが、非常に大切です。まず、意識したいのが「体重のコントロール」です。体重が増加すると、歩行時にかかとにかかる衝撃は、その何倍にも増幅されます。過体重や肥満は、足底腱膜に常に過剰な負荷をかけ続ける、最大の危険因子の一つです。バランスの取れた食事と、かかとに負担の少ない運動(水泳やサイクリングなど)を組み合わせ、適正体重を維持することは、根本的な予防に繋がります。次に、「立ち方」や「歩き方」の見直しです。長時間、同じ姿勢で立ち続けることは避け、こまめに休憩をとったり、片足ずつ台に乗せるなどして、体重がかかる位置をずらす工夫をしましょう。歩く際には、かかとから強く着地するのではなく、足裏全体で、柔らかく着地するようなイメージを持つと、衝撃を和らげることができます。また、急に走り出したり、ジャンプしたりといった、かかとに急激な負荷がかかる動作は、できるだけ避けるように心がけてください。そして、意外と見落としがちなのが、「室内での過ごし方」です。フローリングなどの硬い床の上を、裸足や薄いスリッパで歩き回ることは、知らず知らずのうちに、かかとにダメージを蓄積させています。室内でも、クッション性の良いルームシューズや、厚手の靴下を履くなどして、かかとを衝撃から守ってあげましょう。さらに、一日の終わりには、「足をいたわる習慣」を取り入れることをお勧めします。ぬるめのお湯にゆっくりと足を浸けて、血行を促進させたり、お風呂上がりに、ふくらはぎや足裏のストレッチを念入りに行ったりすることで、その日に溜まった筋肉の疲労や、腱膜の緊張をリセットすることができます。これらの生活習慣は、どれも地道なことばかりです。しかし、この日々の小さな積み重ねこそが、あなたの足の健康を守り、朝の第一歩を、痛みではなく、快適な一日の始まりに変えてくれる、最も確実な道筋となるのです。
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その蕁麻疹、風邪薬が原因かも
風邪をひいた時に現れる蕁麻疹。その原因は、ウイルス感染による免疫反応の乱れだけではありません。もう一つ、非常に重要な原因として考えなければならないのが、「服用した薬」によるアレルギー反応、すなわち「薬疹(やくしん)」です。風邪のつらい症状を和らげるために飲んだ市販の風邪薬や、病院で処方された解熱鎮痛薬、咳止め、抗生物質などが、思いがけず蕁麻疹の引き金になってしまうことがあるのです。薬疹としての蕁麻疹は、薬を服用してから、比較的早い時間、数分から数時間以内に現れることが多いのが特徴です。薬の成分に対して、体がアレルギー反応を起こし、ヒスタミンが大量に放出されることで、急激にかゆみを伴う発疹が全身に広がります。特定の薬を飲むたびに、決まって蕁麻疹が出るという場合は、その薬に対するアレルギーである可能性が非常に高いと言えます。特に注意が必要なのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される解熱鎮痛薬です。イブプロフェンやロキソプロフェン、ジクロフェナクといった成分がこれにあたり、多くの市販の風邪薬や痛み止めに含まれています。これらの薬は、誰にでもアレルギー反応を起こす可能性があるだけでなく、「NSAIDs過敏症」と呼ばれる、特殊なタイプの蕁麻疹を引き起こすことがあります。これは、アレルギーとは少し異なるメカニズムで、薬の作用によって、体内でヒスタミンの放出を促す物質が増えてしまうことで起こります。この場合、一つの薬だけでなく、NSAIDsに分類される他の多くの薬に対しても、同様に蕁麻疹が出てしまうため、注意が必要です。もし、風邪薬を飲んだ後に蕁麻疹が出た場合は、まず、その薬の服用を直ちに中止し、医療機関を受診してください。そして、受診の際には、いつ、どの薬を飲んだのかが分かるように、薬のパッケージやお薬手帳を持参することが、原因を特定する上で極めて重要です。自己判断で、同じ成分を含む別の市販薬を試すようなことは、絶対に避けるべきです。一度、薬でアレルギーを起こすと、次に同じ薬を服用した際に、より重篤な症状(アナフィラキシーショックなど)を引き起こす危険性もあるからです。
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休日や夜間にインフルエンザを発症したら
インフルエンザの症状は、しばしば、夕方から夜間にかけて、あるいは休日に、急激に悪化することがあります。高熱と体の痛みで、一刻も早く楽になりたいのに、かかりつけのクリニックは閉まっている。そんな時、「救急外来へ行くべきか、それとも朝まで我慢すべきか」と、多くの方が判断に迷うことでしょう。この判断は、患者さんの年齢や基礎疾患の有無、症状の重さによって異なります。まず、基本的に、健康な成人で、症状が発熱や関節痛だけであり、水分が摂れていて、意識がはっきりしている場合は、必ずしも夜間に救急外来を受診する必要はありません。抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に服用を開始すれば効果が期待できるため、翌朝に医療機関を受診するのでも、十分に間に合います。むしろ、軽症の状態で救急外来を受診することは、重症患者の治療の妨げになったり、他の感染症をもらってしまったりするリスクもあります。自宅で、市販のアセトアミノフェン系の解熱鎮痛薬を服用し、十分な水分補給と休息をとりながら、朝を待つのが賢明な選択です。しかし、中には、緊急で受診すべき「危険なサイン」も存在します。以下のような症状が見られる場合は、ためらわずに、休日・夜間急患センターや、救急外来を受診してください。呼吸困難: 息が苦しい、肩で息をしている、唇の色が紫色になる(チアノーゼ)。意識障害: 呼びかけに反応しない、意味不明な言動がある、けいれんを起こした。激しい脱水症状: 水分が全く摂れない、ぐったりして動けない、尿がほとんど出ていない。特に、高齢者や、心臓病、呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を持っている方、妊娠中の方は、重症化するリスクが高いため、早めの受診が推奨されます。また、小さなお子様の場合は、前述した「インフルエンザ脳症」の初期症状(意識障害、けいれん、異常言動)に、細心の注意を払う必要があります。判断に迷った場合は、地域の救急相談センター(#7119など)に電話で相談し、専門家のアドバイスを仰ぐのも良いでしょう。我慢と受診のバランスを適切に見極めることが大切です。
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妊娠中にりんご病がうつると危険?
りんご病は、通常は軽い症状で治まる病気ですが、一つだけ、特に注意が必要なケースがあります。それが、「妊娠中の女性」が感染した場合です。妊娠中に、りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に初めて感染すると、ウイルスが胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも感染してしまう(胎内感染)可能性があります。全てのケースで問題が起こるわけではありませんが、一部の赤ちゃんに、深刻な影響を及ぼすことがあるため、正しい知識を持っておくことが非常に重要です。ウイルスに感染した赤ちゃんは、重度の貧血を起こし、その結果、体全体がむくんでしまう「胎児水腫」という状態になることがあります。また、心臓に水が溜まる心不全などを引き起こし、最悪の場合、流産や死産に至る危険性も報告されています。特に、妊娠初期から中期(妊娠20週頃まで)に母親が感染した場合に、そのリスクが高まるとされています。ただし、ここで過度に心配しすぎる必要もありません。まず、日本の成人女性の多くは、子供の頃に知らないうちにりんご病に感染し、既に抗体(免疫)を持っていると言われています。抗体を持っている場合は、たとえウイルスに接触しても、再感染したり、赤ちゃんに影響が出たりする心配は、ほとんどありません。また、妊娠中に初めて感染したとしても、必ずしも赤ちゃんに感染するわけではなく、さらに赤ちゃんに感染した場合でも、全てが胎児水腫になるわけではありません。多くの場合は、無事に生まれてきます。もし、妊娠中にりんご病が流行している、あるいは家族がりんご病にかかってしまった、などの状況で不安を感じた場合は、まず、かかりつけの産婦人科医に相談してください。産婦人科では、血液検査でりんご病の抗体の有無を調べることができます。抗体がない(感染のリスクがある)と判断された場合は、人混みを避けたり、マスクや手洗いを徹底したりといった、感染予防策をより一層、厳重に行う必要があります。そして、万が一、感染が疑われる場合は、超音波検査(エコー検査)で、お腹の赤ちゃんの状態を注意深く、定期的に観察していくことになります。正しい知識を持ち、冷静に、そして速やかに専門医に相談することが、母子共に健康を守るための最も大切な行動です。