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熱中症で吐き気と頻尿、私の失敗談
去年の夏、私は身をもって、間違った水分補給の怖さを知りました。それは、週末に友人と、炎天下のなかでバーベキューを楽しんでいた時のことです。日差しが強く、汗が滝のように流れるのを感じながらも、私は「熱中症にならないように」と、意識してペットボトルの水を次から次へと飲んでいました。2リットルのボトルが、あっという間に空になるほどです。しかし、しばらくすると、体に異変が起き始めました。頭がズキズキと痛み出し、胃がムカムカして、吐き気を催してきたのです。「おかしいな、こんなに水を飲んでいるのに」。そう思っている間にも、なぜかトイレには30分おきに行きたくなります。そして、出る尿は、まるで水のように無色透明でした。友人からは「顔色が悪いよ、大丈夫か?」と心配されましたが、私は「大丈夫、水分は摂っているから」と強がっていました。しかし、そのうち、立っているのも辛いほどの倦怠感と、めまいに襲われ、その場に座り込んでしまいました。見かねた友人が、近くの救急外来へ連れて行ってくれました。診察室で医師に状況を話すと、「それは、水だけを飲みすぎたことによる、低ナトリウム血症、つまり熱中症の一種ですよ」と告げられました。汗で塩分が大量に失われているのに、水だけを補給したことで、血液が薄まり、体は水分を保持できずに、尿として排出し続けていたのです。そして、体内の電解質バランスが崩れた結果、頭痛や吐き気といった症状が現れたのだと説明されました。私は、点滴で生理食塩水などを補給してもらい、ようやく体調が回復しました。良かれと思ってやっていた水分補給が、実は熱中症を悪化させる原因になっていたとは、まさに目から鱗でした。この経験を通じて、私は、水分補給とは、単に水を飲むことではなく、「失われたものを、正しく補う」ことなのだと学びました。それ以来、夏の外出時には、水だけでなく、必ず塩分タブレットや経口補水液を携帯するようにしています。私のこの失敗談が、皆さんの正しい熱中症対策の一助となれば幸いです。
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歩くと痛いかかと、私が足底腱膜炎を克服した話
それは、私が40代半ばに差し掛かった頃のことでした。健康のためにと、週末にジョギングを始めたのですが、数ヶ月経ったある朝、ベッドから降りた第一歩で、右のかかとに、まるで釘を踏んだかのような、鋭い痛みが走りました。あまりの痛さに、思わず「うっ」と声が出たほどです。その日は、歩いているうちに痛みが和らいだので、気にせずに過ごしましたが、翌朝も、またその次の朝も、同じ激痛が私を襲いました。特に、長時間デスクワークをした後、立ち上がって歩き出す瞬間も、同様に痛みます。これはおかしい。そう思い、私は近所の整形外科を受診しました。レントゲンを撮り、医師に症状を話すと、「典型的な足底腱膜炎ですね」と診断されました。ランニングで、かかとに負担がかかりすぎたのが原因だろうとのことでした。医師からは、まずジョギングを休むこと、そして、足の裏のストレッチを毎日行うようにと指導されました。その日から、私のかかととの闘いが始まりました。朝晩、お風呂上がりに、教わったストレッチを欠かさず行いました。足の指を反らせたり、アキレス腱を伸ばしたり。最初は、硬くなった足の裏が悲鳴を上げるようでしたが、続けるうちに、少しずつ伸びるようになっていくのが分かりました。また、通勤用の革靴も、クッション性の高いスニーカーに変えました。そして、日中は、会社のデスクの下にゴルフボールを置いておき、仕事の合間に、足の裏でコロコロと転がして、マッサージをすることを日課にしました。正直、最初の1ヶ月は、あまり劇的な変化はありませんでした。朝の第一歩の痛みは、相変わらずです。しかし、諦めずにストレッチとマッサージを続けていると、2ヶ月目が経つ頃から、朝の痛みが、少しずつ和らいでいることに気づいたのです。あの「釘を踏むような」激痛が、「少し痛いな」くらいに変わっていました。そして、3ヶ月が経つ頃には、日常生活で痛みを感じることは、ほとんどなくなっていました。完全に痛みが消えるまでには、半年近くかかりましたが、地道なセルフケアの積み重ねが、確実に結果に繋がったのだと実感しています。この経験を通じて、私は、自分の体と向き合い、根気よくケアを続けることの大切さを学びました。
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りんご病と診断された、私の関節痛体験
先月、小学生の息子が、頬を真っ赤にして学校から帰ってきました。小児科で「りんご病ですね」と診断され、熱もなく元気だったので、特に心配はしていませんでした。しかし、その1週間後、今度は私の体に異変が起きたのです。最初は、朝起きた時の両手の指のこわばりでした。指がむくんだように感じ、握りしめるのが困難なのです。そのうち、手首や足首にも、ズキズキとした痛みが広がり始めました。まるで、インフルエンザの時のような、関節の痛みです。発疹も熱もなかったので、最初は単なる疲れや、歳のせいかと思っていました。しかし、その痛みは日に日に強くなり、ついには、朝、ベッドから起き上がるのさえ辛い状態になってしまいました。パソコンのキーボードを打つのも、スマートフォンの画面をタップするのも、指の関節に激痛が走ります。あまりの痛みに、私は整形外科を受診しました。レントゲンを撮っても、骨に異常はありません。「関節リウマチの可能性も考えて、血液検査をしましょう」と医師に言われ、私の心は不安でいっぱいになりました。そんな時、ふと、息子のりんご病のことを思い出し、医師にそのことを話してみました。すると、医師は「ああ、それなら、りんご病がうつったのかもしれませんね。大人がかかると、ひどい関節痛が出ることがあるんですよ」と教えてくれました。その後の血液検査で、やはり私は、りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に感染していることが判明したのです。原因がはっきりしたことで、少しだけ安心しましたが、関節痛のつらさは続きました。結局、痛み止めの薬を飲みながら、日常生活の動作もままならない状態が2週間ほど続き、完全に痛みがなくなるまでには、1ヶ月以上もかかりました。子供の軽い病気だとばかり思っていたりんご病が、大人にとっては、これほどまでにつらい症状を引き起こすとは、夢にも思っていませんでした。この経験を通じて、感染症を甘く見てはいけないこと、そして、自分の体に異変を感じたら、その前に家族にどんな病気があったかを医師に伝えることの重要性を、痛感しました。
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りんご病に治療薬はある?家庭でのケア
お子さんがりんご病と診断されると、保護者としては「何か治療薬はないのだろうか」と考えるかもしれません。しかし、残念ながら、現時点では、りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に直接効く「特効薬」や、感染を予防するための「ワクチン」は存在しません。りんご病の治療は、基本的には、子供自身の免疫力でウイルスを克服するのを待つ、対症療法が中心となります。つまり、出てきた症状を和らげながら、自然に治るのをサポートしてあげることが、家庭でのケアの基本です。ほとんどの子供は、りんご病にかかっても、頬が赤くなる以外は、比較的軽い症状で済みます。発熱や、軽い鼻水、咳などが見られる場合は、それに対するケアを行います。熱が高い時は、子供が辛そうであれば、医師から処方された、あるいは薬局で購入した、子供用の解熱剤を使用しても構いません。ただし、使用の際は、必ず用法・用量を守ってください。また、脱水を防ぐために、水分補給をこまめに行うことが大切です。子供が欲しがる時に、麦茶やイオン飲料などを十分に与えましょう。頬や手足の発疹には、通常、かゆみはあまり伴いませんが、もし、かゆみを訴えるようであれば、冷たいタオルで冷やしてあげると、少し楽になることがあります。強く掻きむしって、皮膚を傷つけてしまわないように、爪は短く切っておきましょう。食事は、子供が元気で食欲があれば、特に制限はなく、普段通りのものを与えて大丈夫です。発熱などで食欲がない時は、無理強いせず、ゼリーやプリン、アイスクリームなど、子供が口にしやすいものを与えると良いでしょう。最も大切なのは、「十分な休息」です。発疹が出て、りんご病と診断された時点で、感染力はほとんどありませんが、体はウイルスと戦って消耗しています。家でゆっくりと過ごさせ、体力の回復を促してあげましょう。りんご病は、特別な治療をしなくても、自然に治っていく病気です。過度に心配せず、子供が快適に過ごせるようにサポートしながら、回復を見守ってあげてください。
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朝の一歩が痛い!かかとを守るための生活習慣
朝、ベッドから降りた第一歩目に、かかとに走る激痛。足底腱膜炎に悩む多くの人が、毎日、この憂鬱な瞬間と向き合っています。このつらい症状を改善し、再発を防ぐためには、整形外科での治療やセルフケアに加え、日常生活の中に、かかとへの負担を減らすための「生活習慣」を組み込むことが、非常に大切です。まず、意識したいのが「体重のコントロール」です。体重が増加すると、歩行時にかかとにかかる衝撃は、その何倍にも増幅されます。過体重や肥満は、足底腱膜に常に過剰な負荷をかけ続ける、最大の危険因子の一つです。バランスの取れた食事と、かかとに負担の少ない運動(水泳やサイクリングなど)を組み合わせ、適正体重を維持することは、根本的な予防に繋がります。次に、「立ち方」や「歩き方」の見直しです。長時間、同じ姿勢で立ち続けることは避け、こまめに休憩をとったり、片足ずつ台に乗せるなどして、体重がかかる位置をずらす工夫をしましょう。歩く際には、かかとから強く着地するのではなく、足裏全体で、柔らかく着地するようなイメージを持つと、衝撃を和らげることができます。また、急に走り出したり、ジャンプしたりといった、かかとに急激な負荷がかかる動作は、できるだけ避けるように心がけてください。そして、意外と見落としがちなのが、「室内での過ごし方」です。フローリングなどの硬い床の上を、裸足や薄いスリッパで歩き回ることは、知らず知らずのうちに、かかとにダメージを蓄積させています。室内でも、クッション性の良いルームシューズや、厚手の靴下を履くなどして、かかとを衝撃から守ってあげましょう。さらに、一日の終わりには、「足をいたわる習慣」を取り入れることをお勧めします。ぬるめのお湯にゆっくりと足を浸けて、血行を促進させたり、お風呂上がりに、ふくらはぎや足裏のストレッチを念入りに行ったりすることで、その日に溜まった筋肉の疲労や、腱膜の緊張をリセットすることができます。これらの生活習慣は、どれも地道なことばかりです。しかし、この日々の小さな積み重ねこそが、あなたの足の健康を守り、朝の第一歩を、痛みではなく、快適な一日の始まりに変えてくれる、最も確実な道筋となるのです。
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風邪で蕁麻疹、私のつらかった一週間
それは、季節の変わり目で、少し肌寒い日が続いていた頃のことでした。最初は、喉の痛みと微熱から始まり、「ああ、また風邪をひいてしまったな」と、いつものことだと軽く考えていました。市販の総合感冒薬を飲み、早めに寝て、数日で熱も下がり、風邪は治りかけのように思えました。しかし、その矢先、私の体に異変が起きたのです。夜、お風呂から上がって体を拭いていると、太ももの内側に、蚊に刺されたような、赤くて少し盛り上がった発疹がいくつかできているのに気づきました。最初は、ダニか何かに刺されたのかと思いましたが、その発疹は、見る見るうちに、お腹や背中、腕へと広がっていき、それぞれがくっついて、地図のような大きな広がりを見せ始めました。そして、何よりも耐え難かったのが、その猛烈な「かゆみ」です。体の芯から湧き上がってくるような、いてもたってもいられないかゆみに襲われ、私は夜通し、体を掻きむしり続けました。翌朝、鏡に映った自分の姿を見て、愕然としました。全身がまだらに赤く腫れ上がり、まるで別人のようでした。風邪の残りの倦怠感と、蕁麻疹のかゆみと、そして寝不足で、心身ともに限界でした。私は、すぐに皮膚科クリニックへ駆け込みました。医師は、私の全身の発疹を診て、風邪をひいていた経緯を話すと、「風邪のウイルスに、免疫が過剰に反応してしまったんでしょうね。ウイルス性の蕁麻疹です」と説明してくれました。そして、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬の内服薬と、炎症を抑えるステロイドの塗り薬を処方してくれました。薬を飲み始めると、あれほど猛威を振るっていたかゆみは、数時間で少しずつ和らいでいきました。完全に発疹が消えるまでには、1週間ほどかかりましたが、かゆみがコントロールできるだけで、精神的には天国と地獄ほどの差がありました。この経験を通じて、私は、風邪が単なる呼吸器の病気ではなく、全身の免疫システムを揺るがす、侮れない病気なのだということを、身をもって知りました。そして、つらい症状は我慢せず、速やかに専門医の助けを求めることの大切さを痛感したのです。
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りんご病の子供、登園や登校はどうする?
お子さんがりんご病と診断された時、保護者の方が悩むのが、「いつまで学校や保育園を休ませれば良いのか」という問題でしょう。りんご病は伝染性の病気であるため、他の子供たちにうつしてしまわないか、心配になるのは当然のことです。しかし、りんご病の登園・登校に関する考え方は、インフルエンザなど他の感染症とは少し異なります。その鍵となるのが、りんご病の感染力のピークの時期です。前述したように、りんご病の感染力が最も強いのは、頬が赤くなる前の、軽い風邪のような症状が出ている時期です。そして、りんご病の最大の特徴である「頬の赤い発疹」が現れた時点では、もうほとんど他の人にうつす力はないと考えられています。このため、学校保健安全法においても、りんご病(伝染性紅斑)は、「第三種の感染症」の中の「その他の感染症」に分類されており、「通常、発疹期には感染力はないと考えられるので、全身状態が良ければ登校(園)可能であり、出席停止の必要はない」とされています。つまり、法律上は、一律に出席停止を義務付けられている病気ではないのです。頬が赤くなって、りんご病と診断された時点で、子供の熱も下がり、元気で食欲もあるのであれば、基本的には普段通りに登園・登校しても問題はない、というのが一般的な見解です。ただし、これはあくまで原則であり、実際の対応は、地域や各園・学校の方針によって異なる場合があります。また、発疹期であっても、まだ発熱や倦怠感などの全身症状が残っている場合は、無理をせず、自宅でゆっくりと休養させることが大切です。お子さんがりんご病と診断されたら、まずは、通っている保育園や学校にその旨を報告し、登園・登校の基準について確認するようにしましょう。その上で、医師の診断と、お子様の全身状態をよく観察し、最終的な判断をすることが重要です。発疹が出ていることで、周りの目が気になるということもあるかもしれませんが、病気の特性を正しく理解し、適切な対応を心がけてください。
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首のしこり、病院へ行くまでの不安な日々
2ヶ月ほど前のことです。お風呂で体を洗っている時、ふと、右の首筋、耳の下あたりに、ビー玉くらいの大きさの、コリコリとしたしこりがあることに気づきました。痛みは全くありません。触ると、皮膚の下で少し動くような感じがします。「なんだろう、これ」。その日から、私の心は、重たい不安に支配されることになりました。すぐにスマートフォンで「首、しこり、痛みなし」と検索しました。画面に現れたのは、「リンパ節の腫れ」「粉瘤」「脂肪腫」といった、比較的安心できる言葉と共に、「悪性リンパ腫」「がんの転移」といった、恐ろしい言葉の数々でした。調べれば調べるほど、悪い可能性ばかりが頭をよぎり、夜も眠れない日が続きました。仕事中も、無意識に首のしこりを触っては、大きくなっていないか、硬くなっていないかと、一日中、そのことばかり考えていました。病院へ行かなければ、とは思うものの、「もし、がんだと宣告されたらどうしよう」という恐怖が、私の足を竦ませていました。しかし、このまま不安を抱え続けるのも限界でした。意を決して、私は近所の耳鼻咽喉科のクリニックを予約しました。診察の日、私は震える声で、しこりに気づいた経緯と、自分の不安な気持ちを医師に話しました。医師は、私の話を静かに聞いた後、丁寧に首を触診し、「おそらく、何かの炎症に反応した、リンパ節の腫れでしょうね。心配ないことが多いですよ」と、穏やかな声で言いました。そして、念のため、超音波(エコー)検査をして、しこりの内部の状態を詳しく見てくれることになりました。検査室で、首に冷たいゼリーを塗られ、エコーの機械を当てられる間、私の心臓は張り裂けそうなくらい、ドキドキしていました。数分後、再び診察室へ。医師は、エコーの画像を見せながら、「リンパ節の形もきれいですし、悪いものを疑うような所見はありません。おそらく、気づかないうちに、どこかにあった軽い炎症に反応したものでしょう。しばらく様子を見て、小さくならなければ、また来てください」と説明してくれました。その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜け、涙が出そうになったのを覚えています。この経験を通じて、私は、不確かな情報で一人で悩み続けることの辛さと、専門家の診断を受けることの大切さを、身をもって学びました。不安な時こそ、勇気を出して一歩を踏み出すことが、心の平穏を取り戻すための、唯一の道なのだと思います。