激しい嘔吐と下痢で、子供も親もつらい思いをするロタウイルス感染症。実はこの病気は、ワクチンでその発症や、特に重症化を効果的に予防できる「ワクチン・プリベンタブル・ディジーズ(ワクチンで防げる病気)」の一つです。日本では、2020年10月から定期接種となり、多くの赤ちゃんが公費で接種できるようになりました。これから赤ちゃんを迎えるご家庭や、接種について詳しく知りたい方のために、その重要性と効果について解説します。ロタウイルスワクチンは、毒性を弱めたウイルスを、シロップのように口から飲む「経口生ワクチン」です。腸の中でウイルスを増殖させることで、ロタウイルスに対する免疫(抗体)を体に作らせます。現在、日本で使われているワクチンには、「ロタリックス(1価)」と「ロタテック(5価)」の二種類があり、どちらも高い予防効果が確認されています。ロタリックスは二回、ロタテックは三回、それぞれ四週間以上の間隔をあけて接種を完了します。非常に重要なのが、接種を開始する時期です。腸重積症という稀な副反応のリスクを避けるため、初回接種は、生後二ヶ月から、遅くとも生後十四週六日までに行うことが推奨されています。知らずに時期を逃してしまわないよう、赤ちゃんの予防接種スケジュールを、かかりつけの小児科医とよく相談しておくことが大切です。では、ワクチンを接種すると、どのような効果があるのでしょうか。まず、ロタウイルス胃腸炎そのものの発症を、七割から八割程度、予防する効果があります。そして、ワクチンの最大の目的は、「重症化の予防」です。ワクチンを接種していても、ウイルスに感染してしまうことはあります(ブレイクスルー感染)。しかし、その場合でも、症状は格段に軽く済むことがほとんどです。特に、点滴や入院が必要になるような、重篤な脱水症状に陥るリスクを、九割以上も減らすことができると報告されています。つまり、ワクチンは、子供をロタウイルスの最もつらい症状から守ってくれる、強力な「お守り」のようなものなのです。愛する我が子を、 avoidable(避けられる)苦しみから守るためにも、ロタウイルスワクチンの重要性を正しく理解し、適切な時期に接種を受けさせてあげましょう。
ロタウイルスワクチンと症状の軽減