朝、ベッドから降りて最初の一歩を踏み出した瞬間、かかとに鋭い痛みが走る。長時間座った後に立ち上がると、ズキッと痛む。そんな経験はありませんか。かかとの痛みは、日常生活の質を著しく低下させる、非常につらい症状です。その原因は多岐にわたりますが、成人の場合、最も一般的に見られるのが「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」です。これは、足の裏にある、かかとの骨と足の指の付け根を結ぶ強靭な膜「足底腱膜」に、過度な負担がかかり、微細な断裂や炎症が生じることで起こります。特に、朝の第一歩の痛みが特徴的です。また、アキレス腱の付着部である、かかとの後ろ側が痛む場合は、「アキレス腱付着部炎」が考えられます。これも、ランニングなどのスポーツや、硬い靴による圧迫などが原因で、アキレス腱がかかとの骨に付着する部分に炎症が起こるものです。成長期の子供、特に小学校高学年から中学生くらいの活発な男の子に多いのが、「シーバー病(踵骨骨端症)」です。これは、成長期のかかとの骨(踵骨)の骨端線という、まだ柔らかい部分に、運動による過度な負荷がかかることで炎症が起こる、一種の成長痛です。かかとを押すと強く痛むのが特徴です。その他にも、かかとの骨に骨棘(こつきょく)というトゲのようなものができて神経を刺激したり、かかとの下にある衝撃吸収のための脂肪組織が萎縮してしまう「踵部脂肪褥炎(しょうぶしぼうじょくえん)」、まれに、腰の神経が圧迫されることで、かかとに関連痛が出ることもあります。さらに、痛風発作や関節リウマチといった全身性の疾患が、かかとの痛みとして現れることもあります。このように、かかとの痛みの原因は一つではありません。痛みの場所、痛むタイミング、そしてご自身の年齢や生活習慣などを考慮し、適切な診断を受けることが、快方への第一歩となります。