私は現在、静岡県の山間部、四方を杉の木に囲まれた地域で暮らしています。春先になれば山が黄色く霞むほど大量の花粉が舞い、近所の人々は誰もが重度の症状に苦しんでいますが、私は不思議なことに、人生で一度も花粉症になったことがありません。人々からは「奇跡の体質だ」と驚かれますが、私自身は、この健やかさを維持するために日々の生活の中で無意識に行っているいくつかの習慣が、大きな防波堤になっているのではないかと考えています。まず、私が徹底しているのは「家の中に一粒の花粉も入れない」という執念に近い水際対策です。外出から戻った際は、必ず玄関の外で衣服を専用のブラシで払い、その足で浴室へ向かい、髪の毛の隅々までシャワーを浴びます。髪の毛は静電気で花粉を吸着しやすいため、そのままリビングに入れば、そこは瞬く間に花粉の貯蔵庫になってしまいます。私が花粉症にならない人として生きられているのは、こうした物理的な接触時間を最小限にしているからに他なりません。また、私の食卓には一年中、地元の発酵食品が並びます。祖母の代から続く自家製の味噌や漬物、そして毎日欠かさないヨーグルト。これらが私の腸内環境を整え、免疫の暴走を水面下で食い止めてくれている実感があります。実際、数年前に一度、仕事のストレスで食生活が乱れた際、春先に鼻がムズムズする感覚を覚えたことがありました。その時、私は「コップの水が溢れかけている」と直感し、即座に生活を元に戻しました。たっぷりの睡眠と、腸を温める食事。それだけで、翌年には再び症状のないクリアな春を迎えることができたのです。花粉症にならない人というラベルは、決して固定されたものではありません。どんなに頑健な人でも、自分の限界を超えた負荷をかけ続ければ、いつかは発症のスイッチが入ってしまいます。私は自分の体を、外部の環境と常に交渉し続ける精密な機械のように捉えています。山から吹いてくる花粉を敵として憎むのではなく、それを受け流せるだけの内側のしなやかさを保つこと。それが、私がこの美しい山里で、今もマスクをせずに深呼吸できている理由です。周りがどれほど辛そうにしていても、自分は大丈夫だという根拠のない自信を持つのではなく、自分の限界点を知り、そこまで水を溜めないように日々を調律する。この静かな自律の繰り返しこそが、一生、花粉症にならない人であり続けるための、私なりの流儀なのです。