日本の病院内には、急性期と在宅の中間的な役割を果たす地域包括ケア病棟という特殊な場所が存在します。この病棟の設置目的は、急性期の治療を終えた患者が自宅や施設に戻るための準備を整えること、あるいは在宅療養中の患者が一時的に体調を崩した際を受け入れるレスパイト(休息)機能にあります。ここで設定されている病院に入院できる期間は、原則として最大六十日間です。この六十日という数字には、現代の地域医療連携の思想が凝縮されています。急性期病院では二、三週間で退院を迫られますが、それだけでは体力が回復しきれず、自宅での生活に不安が残る高齢者が多いのが現実です。そこで、この地域包括ケア病棟というクッションを挟むことで、リハビリを継続したり、自宅に手すりを付ける工事が終わるのを待ったりといった調整が可能になります。病院に入院できる期間が六十日と決まっていることで、医療スタッフは逆算して計画的に支援を行うことができます。看護師やセラピストだけでなく、地域のケアマネジャーが病院を訪れ、退院後の生活を一緒に設計する場にもなります。また、この病棟を利用できるのは、単に回復を待つ人だけではありません。家で介護をしている家族が疲弊し、一時的に患者を預かってほしいという場合、いわゆる社会的入院とは異なる正当な理由での入院としても活用されます。この際も、病院に入院できる期間を意識することで、家族はいつまでに自分の体力を回復させ、再び受け入れ体制を整えるべきかの目標を立てることができます。病院に入院できる期間が有限であることは、一見すると不便に思えるかもしれませんが、それは患者が社会や家庭との繋がりを完全に断たれてしまうのを防ぐための防波堤でもあります。もし病院に入院できる期間に制限がなければ、一度入院したきり二度と家に帰れなくなる人が続出しかねません。六十日という期間は、人間の身体が環境に適応し、次のステージへ進むための準備期間として、絶妙な長さと言えるのかもしれません。地域包括ケアシステムという大きな絵の中で、病院に入院できる期間を有効に使うことは、住み慣れた地域で最期まで生き抜くための大切な権利を守ることに他ならないのです。
地域包括ケア病棟で入院できる期間とその役割を正しく知る