私はかつて、自分の体力を過信し、多少の無理は寝れば治ると信じて疑わない人間でした。しかし、仕事でのプロジェクトリーダーという重責を担うようになった頃から、私の身体は私の意志に反して悲鳴を上げ始めたのです。最初の異変は、毎朝の通勤電車の中で襲ってくる激しい腹痛でした。冷や汗が吹き出し、次の駅で降りずにはいられない。そんな日々が数週間続き、私は内科で胃カメラや大腸検査を受けましたが、結果は「全くの異常なし」でした。医師から「少しお疲れのようなので、整腸剤を出しておきますね」と言われたとき、私は安堵するどころか、原因が分からないことへの更なる不安に襲われました。それからというもの、食欲は減退し、夜は眠れず、ついにはオフィスのドアを開けるだけで吐き気がするようになったのです。途方に暮れていた私に、友人が勧めてくれたのが心療内科への受診でした。最初は「自分は精神的な病気ではない」というプライドが邪魔をして足が向きませんでしたが、生活が立ち行かなくなる恐怖が勝り、ようやく予約を入れました。心療内科の待合室は、意外にも明るく穏やかな雰囲気で、自分と同じようなスーツ姿のビジネスパーソンも多く座っていました。診察室に入ると、医師は私の腹痛の話を遮ることなく、一時間近くも丁寧に聞いてくれました。そこで初めて、私は自分がどれほど過酷なプレッシャーを一人で背負い込み、それを「身体の痛み」として翻訳していたのかを悟ったのです。医師は、私の症状が典型的な心身症の一つである過敏性腸症候群であることを告げ、自律神経を整える薬と共に、仕事の進め方を見直すための具体的なアドバイスをくれました。通院を始めて三ヶ月、あんなに私を苦しめていた毎朝の腹痛は、霧が晴れるように消えていきました。私が心療内科で学んだのは、身体は決して嘘をつかないということです。口で「大丈夫」と言っていても、細胞や神経は限界を正しく察知して信号を送ってきます。もし、内科的な検査で異常が見つからないのに身体が辛いと感じている人がいたら、どうか自分を責める前に心療内科の門を叩いてほしいと思います。そこは、身体の不調というパズルを、心というピースを使って完成させてくれる場所でした。あの日、勇気を出して受診したことが、私のキャリアだけでなく、人生そのものを救ってくれたのだと確信しています。